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大阪地方裁判所 平成2年(行ク)19号 決定 1990年8月10日

申立人 高桑和宏

<ほか一名>

被申立人 大阪府収用委員会

右代表者会長 村田太郎

右指定代理人 白石研二

<ほか七名>

主文

一  本件申立てを却下する。

二  申立費用は、申立人らの負担とする。

理由

一  申立ての趣旨

被申立人が申立人らに対し平成二年五月八日付でした大収六二第一〇号の明渡裁決の効力を停止する。

二  申立ての理由及び被申立人の意見

申立ての理由は、別紙収用裁決執行停止決定申立書及び(再)意見書記載のとおりであり、被申立人の意見は、別紙意見書記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  本件疎明資料によると、起業者大阪府の申立てにより、平成二年五月八日付で被申立人において申立人らに対し別紙収用裁決執行停止決定申立書記載の明渡裁決(以下「本件明渡裁決」という。)をしたことが認められる。

2  そこで、本件申立ての許否について検討する。

申立人らは、本件明渡裁決により平成二年一〇月五日までに本件収用土地を起業者である大阪府に引き渡す義務を負担していることになるが(土地収用法一〇二条)、本件明渡裁決自体には執行力はないから、起業者である大阪府は、申立人らにおいて右期限までに本件収用土地の明渡しをしない場合において、大阪府知事に対して行政代執行法の定めるところにより代執行の請求をし、その代執行により初めて申立人らに対して本件収用土地の明渡しを強制することができることになる(同法一〇二条の二第二項、なお、本件明渡裁決により申立人らが負担している明渡義務は、申立人らが本案において勝訴し本件明渡裁決が取り消された場合には遡って消滅することになるので、明渡義務を負担していること自体により申立人らが回復の困難な損害を被ることはない。)。

したがって、仮に本件収用土地の明渡しにより申立人らが回復困難な損害を被るとしても、申立人らとしては、その代執行の停止を求めることにより、その目的を達することができるから、行政事件訴訟法二五条二項ただし書により、本件明渡裁決の効力を停止することはできないことになる。

よって、本件申立ては、その余の点につき判断するまでもなく、理由がないことが明らかであるから、これを却下することとし、申立費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、 九三条一項本文を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 田畑豊 裁判官 岡久幸治 西田隆裕)

<以下省略>

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